100分de名著 知里幸恵“アイヌ神謡集” [新](1)「アイヌの世界観」[解][字]…の番組内容解析まとめ

出典:EPGの番組情報

100分de名著 知里幸恵“アイヌ神謡集” [新](1)「アイヌの世界観」[解][字]

「アイヌ神謡集」を読み解いていくとアイヌ文化の豊かさ、奥深さが浮かび上がってくる。例えば、神謡はすべてアイヌが畏敬をもって接する「カムイ」の視点から描かれる。

番組内容
「神謡集」に出てくる「カムイ」は「神」と訳されるが通常思い描く「神」とはまるで違う。アイヌにとって「カムイ」とは、動物、植物、鉱物など自然界のほぼすべてのものを指す。また人間が作った道具や衣服、住まいなども「カムイ」だ。そして「カムイ」は超越的な存在ではなく人間と全く対等にやりとりする。あらゆる存在がつながり、支え合い、時に罰し合う有機的な世界観がアイヌの豊かな文化を支えているのだ。
出演者
【講師】千葉大学名誉教授…中川裕,【司会】伊集院光,安部みちこ,【朗読】木原仁美,【語り】宇梶剛士,【声】仲井陽

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – 生涯教育・資格

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  20. 北海道

解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

NHK
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北の大地 北海道。

その先住民族であるアイヌの人々が
伝えてきた物語が

今から100年前
本になりました。

「アイヌ神謡集」。

伝えるのは 人間以外の視点から見た
世界の在り方。

第1回は
神謡の語り手である「カムイ」とは何か

そして 周囲の環境と支え合い 生きる
世界観を読み解きます。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

「100分de名著」
司会の安部みちこです。
伊集院 光です。

今月の名著は こちらです。
ほう。

「アイヌ神謡集」です。

アイヌの女性である
知里幸恵が

口伝えに受け継がれてきたアイヌの物語を
アイヌ語で書き記した本なんですね。

こちらを ちょっと開いてみますと

アイヌ語を ローマ字に
起こしたものと

日本語に訳されたものが
併記されているんですね。

っていうことは
その響きみたい… ものも

何とか 文章で伝えたいとか
そういうことですか。 ええ。

今年はですね 19歳で亡くなった
知里幸恵の 没後100年にあたります。

このタイミングで アイヌの物語に
耳を傾けたいと思います。

では 指南役 ご紹介しましょう。

言語学者の中川 裕さんです。
(一同)よろしくお願いします。

千葉大学名誉教授の中川 裕さん。

専門は アイヌ語学。

1970年代から
アイヌ文学の記録活動を行ってきました。

漫画「ゴールデンカムイ」の
アイヌ語監修を務めた中川さんと

知里幸恵が 「アイヌ神謡集」に託した
思いを読み解きます。

伊集院さんは 「ゴールデンカムイ」を
読んだことはありますか?

こんな面白いのあるんだと思って
読んで

5巻ぐらいまで追っかけて
そのあと 見失ってる隙に

「伊集院さん いよいよ終わりますよ」
「え 終わんの?」ってなって。

何か でも
「ゴールデンカムイ」を読むことで

アイヌということに興味を持つ人とかも
相当 増えましたよね。 そうですね。

魅力的で 強い意志を持った
そのアイヌの登場人物 たくさん出して

しかも これがヒットしたおかげで

今まで アイヌって 存在そのものすら
意識してなかった人たちが

大勢 目を向ける そういうような状況
というのが出てきたってことは確かです。

そこから つながって
広がるといいですよねえ。

じゃあ 今回 取り上げる本の
基本情報を見ておきましょう。

「アイヌ神謡集」の出版は 1923年です。

13篇の神謡を
収録した本なんですけれども

まず この「神謡」というのは
中川さん 何でしょうか?

ひと言で言えば…

で その人間以外のものが
神謡の「神」で表されてるわけです。

で 著者は アイヌの女性で知里幸恵です。

北海道の幌別に生まれて
6歳の時に 旭川に移り住みました。

この時 一緒に暮らすようになった方が

伯母の金成マツと
祖母のモナシノウクさんです。

おばあちゃんのモナシノウクという人は…

金成マツというのは
その娘さんで

この人は 自分の記憶している
口承伝承をですね

膨大な量のテキストを
手書きで書いて

その翻訳作業というのは
いまだに続いてるんですね。

いまだに終わらない。
へ~。

さあ では「アイヌ神謡集」が書かれた
背景から ご紹介しましょう。

ナレーションは 俳優の宇梶剛士さんです。

1918年 知里幸恵が15歳の時に

伯母と祖母のもとへ
東京から 一人の人物が訪ねてきました。

アイヌの口承文芸を記録するため

道内各地のアイヌ村を
訪ね歩いていました。

初めて 金田一に出会った幸恵は…

…と問いかけます。

なぜなら このころ
アイヌ語をはじめとするアイヌの文化は

危機を迎えていたからです。

明治維新以降 北海道が アイヌの土地だ
という意識がない政府の政策により

大量の和人が 北海道へ流入。

アイヌは 土地だけではなく

文化や風習までも
次々に取り上げられていたのです。

そんな時代に生きる
アイヌの少女 知里幸恵に対し

金田一は 熱く答えました。

これが きっかけとなり

幸恵は 自分でも アイヌ語で
アイヌの物語を残そうと決意します。

東京に戻った金田一は
3冊のノートを幸恵に送りました。

彼女は そこに さまざまなジャンルの
アイヌの物語を書きつづります。

ノートを読んだ金田一は 感嘆し
「是非 本にしたい」と申し出て

東京へ来るよう 勧めました。

家族は 心臓が弱い幸恵を心配し
反対したのですが

本人の強い希望で上京。

そこで推敲を重ねて
「アイヌ神謡集」を書いたのです。

知里幸恵は 書籍として刊行されるのは
見ることなく

その前に亡くなってるんですよね。

その年の夏というのが
かなり猛暑だったらしいんですね。

北海道育ちの 心臓の悪い幸恵には
かなり過酷な状況だったらしい。

その中で 「神謡集」の原稿を書いて

校正をし終えた その日の夜に亡くなった
というふうにね まあ いわれてますね。

その神謡について もうちょっと
深く見ていきたいんですが

アイヌ語で言いますと
「カムイユカラ」と言うんですね。

ということは 「カムイ」というのが
「神」なのかなと思うんですが。

まず その前にね…

カムイ…。
「ム」が高くなるんですね。

ちょっと 一緒にやってみましょうか。
「カムイ」。 カムイ。

カムイ。 そうそう。
そういう発音をするんですね。

普通 「神様」って訳すんですが

日本語の「神様」というと
何か 天界にいてね。
そうです。

人間とは こう 隔絶されたところにいる
存在みたいな感じなんだが

アイヌ語の「カムイ」というのは
それとは全然違うので。

例えば
そこら辺を歩いてる 犬とか猫とかね

火とか水とか 木とか草とかも

かみなりとか
全て カムイというふうに呼ぶわけです。

これだけだったら カムイというのは

「自然」って言ってしまえばいいじゃないか
というふうにも思うんだけども

実を言うと 家とか舟とか

そういった
人間が作るものも全てカムイなんですね。

例えば おだんごとかね
そういうようなものは カムイじゃない。

はい。

魂を持ってるものが全部カムイかというと
そうじゃなくって

その中で 何か意思を持って…

ああ でも ちょっと面白いです。

まだ 分け方のコツは
分かってないですけども。

それはね ここから ここは
カムイじゃないとか

これは カムイだとかっていうのは

すっぱりと
分けられるものではないんですけれども

カムイを 「神様」というのは なんだと。
「自然」というのも ちょっと違うと。

じゃあ 何て言ったらいいのか。

「環境」と言うしかないんじゃないかな
というふうには思っています。

カムイと人間も
それぞれの関わりがあるんですよね。

例えば 動物から 肉をもらわなければ
人間は 肉が食べられないわけですね。

人間は カムイがいなかったら
生きていくことはできないわけですよね。

そういう考え方を
昔の人たちは していたわけです。

こちらで説明して頂きましょうか。
舟で説明しますと

舟のカムイ 人間を運ぶことはできる。
その恩恵に対して

人間が作らないと この世に
存在しないようなものを捧げるわけです。

その代表的なものが お酒でね。
ええ。

それから イナウというのは…

これも 自然には存在してないわけですね。

ほう。

なので もらうと非常にうれしいらしい。
ほう。

舟は 乗ってもらえるって感じですか?
そうそう。

舟の意識としては。
そうです。

うれしいんだ。
はあ~ うれしいんだ。

そうです。 だからね…

はい はい はい。

これが基本だと思うんですね。

では 「アイヌ神謡集」から
村を守るカムイとされる

シマフクロウが主人公の物語
読んでみましょう。

朗読は 知里幸恵の姪の娘である
木原仁美さんです。

シマフクロウは 羽を広げると
2メートルにもなる

日本最大のフクロウです。

アイヌの間では 厄災が及ばないように

夜じゅう 村を見守っている
カムイとされています。

そんなシマフクロウが 人間の村に
シカもサケも やって来なくなって

飢饉になっている訳を
天界に問いただそうとする物語が…

自分は年老いて
天界に談判に行けないので

若者を使者に立てたいという
シマフクロウ。

カムイの世界に文字はないので
書状を持たせるわけにはいきません。

談判の内容を間違えずに覚え
天界のカムイたちを説得してくれる

自分の代役を募集することにします。

最初にやって来たのは カラス。

シマフクロウは
談判の内容を言い聞かせようとします。

シマフクロウが用件を伝え終わるのに
5日半 かかるため

カラスは 途中で居眠り。

「こんな者では 役目は務まらない」と

シマフクロウは
カラスを殺してしまいます。

次に来たカケスも 途中で寝てしまい
殺されることに…。

ようやく 最後にやって来た
カワガラスの若者が 用件を聞き終え

6日目に天界に飛び立つと
見事 問題を解決。

シカやサケが
人間の村にやって来るようになります。

安心したシマフクロウは
カワガラスに 後を任せ

天界へと帰っていきました。

ふ~ん…。

でも 展開として びっくりするのは
あっさり殺してしまう…。
殺すね~!

かつてね アイヌ社会では
「チャランケ」といってですね

もめ事があった時に
双方から 代表が出てね

討論を戦わすっていう
そういう習慣があったんですね。

まあ 言葉で解決すると。

NHKがですね 昭和21年に録音した
チャランケのレコードがあるので

ちょっと聴いてみましょう。
すげえ。

へえ~!
面白い。

ほんとですねえ。
いや そんな気がする。

途中で 口を差し挟んで

「それは違うんだ」とかって
言ったりしたらば その時点で負け。

それから
その 何か言ってることに腹立てて

殴ろうとしたりということをしたら
負けなんですね。

体力がなくなって 力尽きて もう駄目だ
動けねえということになったら

そっちが負け。

ああ~。
なるほど なるほど。

そういう話なわけね。

でも そもそものところなんですけども

物語にあった人間の村に シカとかサケが
来なくなったって言ってたんですが

あれは ちゃんと理由があるんですか?

シカとかサケっていうのはね
ちょっと他の動物と違って

あんまり カムイ扱いされないんですね。

うわ 何か あの土地においての
シカとサケの在り方というか

重要性みたいのも
ちょっと浮き上がりますね。

本当に食うのかどうかも分からないような
量をとっちゃってって やってるうちに

資源 枯渇しますよっていう。

今のお話は カムイが遣わしたものを
粗末に扱ったら こうなりましたという

お話だったと思うんですけども
この次は

カムイそのものを粗末にするとどうなるか
語られている物語 読んでみましょう。

乾いた沼貝が
死にそうになって 苦しんでいると

一人の女がやって来て 言いました。

女は 沼貝を踏んづけていきました。

次にやって来た娘は
沼貝に同情して 言います。

そう言って 沼貝を集めて
きれいな湖に入れてくれました。

このあと カムイである沼貝が
どうしたかというと…。

まあ 沼貝というのは 川真珠貝
という貝なんだけれども

取るに足らないもののような
気がするわけだけど

穂摘みの道具として使う貝を
粗末に扱ったら

畑が枯れてしまうというふうに
つながってるわけですよね。

で 最初に おっしゃってた
環境っていう考え方だっていうのも

ちょっと この話は
よく響いてる話だなって 僕は ちょっと。

それでね その沼貝から見た 人間との関係
というのが描かれてるわけで

これを まあ
子供の時から聞かされていれば…

…というふうに思うんですけどね。

今のは カムイに対して
こういうことをすると

こういう目に遭うよという
話だったんですけども

カムイが
人間に対して 悪いことをすると

カムイにも相応の結果があるという
物語があるんですね。
へ~。

人間を殺そうとする
カムイの物語もあります。 ご覧下さい。

主人公の狐は ある時 岬の上から…

…の3人が 舟で海にこぎだすのを見ます。

狐が「暴風の魔」を呼ぶと 海は荒れ

サマユンクルと シュプンラムカは
死んでしまいます。

生き残ったオキキリムイは
岬の上に狐を見つけ

蓬の小弓で 狐の首を射ました。

物語の最後に 狐は こう語ります。

狐 ひどい目に遭いましたね。
ええ。

便所の一部になっちゃいましたね。
ええ。

結構 衝撃ですよね。
衝撃的ですね。

そのカムイっていうのは 汚いもの
臭いものは 大っ嫌いなんですね。

…という そういう考え方もあるんですね。

そうすると この狐は
その手順を踏んでもらってないから

肉体から出られないんです 魂が。
あ~ ずっと臭いんだ。

そう。 魂は不滅ですので…

神が絶対という感じでもないんですね。

何か 不思議なポジショニングですね
何か。

もう 二度とお供物もあげなきゃ

感謝の祈りも捧げないぞというふうにして
脅かすっていうね。

…というのが まあ アイヌの考え方。

まさに 何かこう 環境…
環境ですね。

これと どうバランス取って 生きていく?
っていう

何か そういうことは
すごく含まれてますね。

次回は どんなところが
ポイントになりそうですか?

今回は
その「神謡」のね 「神」の所に

焦点を当てて
お話しましたんで

次回はね 「謡」の方ですね
解説していきたいと思います。

中川さん ありがとうございました。
ありがとうございました。

♬~

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