出典:EPGの番組情報
NHK地域局発 ラウンドちゅうごく「コロナと差別とSNS~ネット社会の闇」[字]
新型コロナウイルス感染者や関係者に対する差別が深刻化。誹謗(ひぼう)中傷・プライバシー侵害・デマがSNSなどで広がり、影響は「地方ほど深刻」(専門家)という。
番組内容
新型コロナウイルスの感染拡大とともに感染者や関係者に対する差別が深刻化。誹謗(ひぼう)中傷・プライバシー侵害・デマがSNSなどネットでたちまち広がり、その影響は「感染者が少なく特定しやすい地方ほど深刻」(専門家)という。去年、島根県の私立高校で起こった大規模なクラスターを例に、「炎上」「拡散」の背景をさまざまな分野の専門家とともに分析。対策の実例も交え、「コロナ差別」との向き合い方を探る。
出演者
【ゲスト】島根大学医学部附属病院臨床研究センター長…大野智,【キャスター】出山知樹,【出演】澤田拓海ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ニュース/報道 – ローカル・地域
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解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)
知恵と工夫を出し合って最善の
方策を探るという点は変わらない
去年 島根県の高校で起きた
新型コロナウイルスの大規模クラスター。
ひぼう中傷やデマが関係者を傷つけ
地域を混乱に陥れました。
あの時 何が起きていたのか。
今回 当事者への取材で
その詳細が明らかになってきました。
私たちは
ネット炎上や心理学の専門家に徹底取材。
新型コロナへの恐怖が
炎上につながっていく
メカニズムが
分かってきました。
どうすれば ひぼう中傷やデマから
身を守ることができるのか。
対策も始まっています。
島根県では
ネット上の悪質な書き込みを監視し…
更に 攻撃的な書き込みに対し
注意を促すシステムも開発されています。
誰もが 被害者にも加害者にもなりうる
SNSの世界。
新型コロナによって
あらわになったネット差別と
その対処法について考えます。
去年8月 島根県の松江市が
国内最大規模の集団感染
クラスターの発生を発表しました。
全校生徒300人余りの高校で
生徒や教職員など
合わせて108人が感染しました。
当時の状況について 生徒や教職員が
NHKの取材に初めて答えました。
クラスターが明らかになった翌日
高校には 批判や ひぼう中傷の電話が
相次いだといいます。
ネットでは 高校の情報が検索され
犯人探しも始まりました。
高校は 部活動など 生徒の様子を
ホームページのブログやSNSで
積極的に発信していました。
その中の生徒たちの写真が
勝手に転載されていったのです。
高校には クレームの電話が
8月だけで100件近く寄せられ
学校と保健所との電話が
妨げられるほどでした。
高校の校長は バッシングのしれつさを
こう振り返っています。
「行き場のない怒りが
原因を作った本校に向けられたのだと
思いました」。
「理不尽と分かっていても
経験した人は
深い心の傷を負うことになります」。
なぜ ひぼう中傷が
ここまで過熱したのか。
心理学の専門家は
コロナという見えないものへの恐怖が
目に見える感染者への攻撃に転嫁したと
分析します。
一方 炎上への対応の難しさも
浮き彫りになりました。
高校は 生徒たちを守るため
ブログやSNSの写真を削除しました。
すると…。
より 炎上が拡大します。
デマも拡散していきます。
生徒は 外出自粛を続けているのに…
…などのうわさが。
更に 生徒が一時的に
マスクを外した写真が勝手に転載され
それらが 「ずっとマスクをつけず
感染対策を怠った」
というデマとして
拡散されていきました。
なぜ こうしたデマを信じてしまうのか。
人は ネットで検索する際
自分が正しいと思い込んでいる情報を
無意識に選び取ってしまうと
専門家は指摘します。
…んだということを
しっかりと意識をするということが
大切だと思うんですね。
例えば マスクを外した写真が
拡散されたケースも
感染したのはマスクをしていなかったから
という思い込みが
背中を押しているといいます。
発生から10日。
事態収拾に向けた動きが出てきます。
島根県は 2年前から
ネット上の悪質な書き込みの
モニタリングを実施していました。
この時 担当者は 過去に例を見ないほどの
ひぼう中傷の書き込みや
プライバシーの侵害を
目の当たりにしたといいます。
県は人権侵害の可能性が高い書き込みを
法務局に通報。
法務局がプロバイダーに要請し
削除を行いました。
行政主導の削除要請は
極めて珍しいケースです。
高校も生徒たちの心を守るため
動き出します。
外出自粛で
ネットに触れる時間が増えた生徒たちに
オンラインミーティングや
スクールメールで
励ましのメッセージを送付。
サッカー 元日本代表の本田圭佑さんも
励ましのツイートを行い
生徒たちに前を向くよう呼びかけました。
全国から支援物資や
応援メッセージも届くようになり
生徒たちは 少しずつ
元気を取り戻していきました。
突然の差別に向き合った半年余り
高校の校長は いかに自分たちが
ネットの攻撃から無防備であったかを
痛感したと振り返りました。
「広報ツール凍結を
隠蔽行為と受け取られ
一部のメディアに
異なった形で報道されたことで
更に炎上することも起きました」。
「行政や公的機関が
『差別・偏見は許さない』との
強い発信をして
人権を守る必要があるのではと思います」。
「ラウンド中国」です。
今回は 松江放送局のスタジオから
お伝えします。
島根大学 医学部教授の
大野 智さんにお越しいただきました。
どうぞ よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
大野さんは 医療情報リテラシーの
専門家でいらっしゃいますけれども
島根の私立高校の事例では
どうして ここまで 攻撃的な
ひぼう中傷が行われてしまったのか
ということについては
どのようにお考えでしょうか?
今回は 新型コロナウイルス感染症
特有の背景
というものもあるかと思います。
リスクコミュニケーションの分野の
研究において
特定の要因があると
リスクを過大視してしまうということが
明らかになっています。
例えば…
複数の情報源から
矛盾する報告が出ているなどが
該当します。
まさに この新型コロナウイルスに
当てはまる項目が
たくさんあるというふうに
ご理解いただけたらと思います。
そのために リスクを過大視してしまい
自分では 意識していなくても
他人に対して攻撃的になってしまい
その結果 ひぼう中傷という行動に
つながってしまった
という背景があったのかもしれません。
コロナウイルスに関して
未知のものであること
そして 分からない部分があることが
攻撃性に拍車をかけたということが
言えるということなんでしょうか。
はい。 未知なものっていうのが
今 お話ししたとおり
リスクを過大視するということ
お話ししました。
そのリスクを過大視するということは
人によって
リスクの受け止め方っていうものも
大きく異なってくるっていうことにも
つながっていきます。
そのため 異なること自体は
問題ではないんですけども
ともすると 自分のリスクの受け止め方
好みや価値観 言えるかもしれません。
それが その人にとっての正しさや
正義感というものにつながってしまい
世に言う 「マスク警察」「自粛警察」
といわれるような
他人への攻撃といった形で
表に出てきてしまう。
こういうのが
今回の新型コロナウイルス感染症の怖さ
と言えるかと思います。
高校の事例でもデマが拡散したり
個人の写真が出回ってしまうという
さまざまな被害がありました。
これは SNSのツールが
多様化していることとも
関係があるんでしょうか?
この多様化の一面としてですね
個人を特定できるような内容が
含まれた情報
これが SNSを通じて
インターネットを介して
世に発信されてしまっているという
現状があります。
これは 裏を返せば
誰もが被害者になる可能性がありますし
また 誰もが
加害者にもなりうるんだという点は
絶対に
忘れないでいただきたいと思います。
では SNSにおいて どのように
差別や ひぼう中傷と
向き合っていけばいいのか
考えていきます。
ひぼう中傷の加害者 被害者
そして その情報の拡散に関わる
大多数の人たち。
それぞれ 3つの立場において
対策を探っていきます。
理不尽な攻撃を行う
加害者にならないためには
どんなことに気を付ければいいのか。
ネット炎上の専門家が注目したのは
ネガティブな感情が起こってから
SNSに書き込むまでの時間です。
怒りを感じた時
瞬時に書き込めてしまうSNS。
アメリカの実験では
攻撃的なメッセージを
送ろうとしたユーザーに
再考を促すアラートを表示したところ
93%が投稿を思いとどまったという
データがあります。
こうしたことを受け
衝動的な書き込みを
機械的にストップしようという取り組みが
始まっています。
去年9月に SNSや掲示板の
モニタリングを行っている会社が
口コミサイトなどの炎上を防ぐために
あるシステムを開発しました。
攻撃性のある言葉を投稿しようとすると
AIが注意を促します。
瞬時に拡散されるSNSでは
投稿前の対処が必要だといいます。
では もし 自分が
ネット上で被害に遭ってしまった場合
どう対処すればいいのか。
法務省や総務省 民間団体などによる
ホームページでは
被害に遭った際の具体的な対応について
示しています。
もし 悪質な書き込みをされた場合
相手とのやり取りを遮断するブロックや
投稿を表示しないミュートで距離を置く。
更に 自分で削除を依頼。
その際 削除依頼をしたい投稿のURLや
アドレスを控え
スクリーンショットなどで
画像や動画も保存することが大切です。
その上で
書き込みをされたSNSの
お問い合わせや
通報のページから
申し込みます。
ひぼう中傷を受けた際の
精神的なダメージも
深刻な問題です。
専門家は SNSとの距離を置くため
スマートフォンを触らない時間を
つくることが
効果的だと指摘します。
そして 最も重要なことが
気付かないまま 自分で
デマや ひぼう中傷を広げないこと。
例えば
新型コロナウイルスにまつわるデマは
情報を確認しないまま拡散することで
生まれます。
誤った情報の拡散を防ぐため
サービスを提供するプラットホーム側も
工夫を始めています。
例えば Twitterで
「ワクチン」と検索ワードを打ち込むと
厚生労働省のホームページが
最初に表示されます。
信頼できる情報に
利用者が たどりつきやすくしています。
また 記事の中身を確認せずに
リツイートをしようとすると
「まず記事を読んでみませんか?」
とアラートが出るようになっています。
一次情報に利用者をいざなう仕組みです。
膨大な情報の海から
どう正しいものを選び取っていくのか。
まさに 今 ネットを正しく使う力
ネットリテラシーが
求められているのです。
さまざまな対策を見てきましたが
大切なのは 感情のまま
情報に振り回されないことだと
感じました。
大野さん そのためには
どうすればいいでしょうか?
ここで 求められてくるのが
正確な情報を入手し 吟味した上で
どのように行動するのか判断する力
特に 健康 医療に関する
情報についての力を
ヘルスリテラシーというふうにいいます。
残念ながら 日本人のヘルスリテラシーは
低いということが分かっています。
一方で ヘルスリテラシーが高いとされる
イギリスなどでは
掛かりつけ医に
ふだんの健康のことなども含め
気軽に相談できる体制が整っています。
ところが日本では そのような体制が
十分に整っていないために
ネットの情報に飛びついたり
うのみにしたりして
まさに 感情のまま
情報に振り回されてしまう
ということが
起きているのかもしれません。
日本でも 正確な情報にアクセスできる
相談窓口というものを
医療機関や公的機関に
整備していくということが
今後 求められてくるかと思います。
新型コロナに関しては
日々 フェーズが変わりますし
新しい情報が毎日更新される状況です。
そうした中で どうすれば
正確な情報を得ることができるのか
大野さんは どのように考えますか?
信頼できる情報源であったり
一次情報 オリジナル情報に当たる
ということが重要になってきます。
例えば
政府や厚生労働省が出している情報
専門家会議が提示してる情報などを
優先すべきであるということを
常に念頭に置いてほしいと思います。
不安な気持ちから やみくもに調べて
不正確な情報に惑わされたり
うのみにしたりした結果
ひぼう中傷してしまう
そのようなことにつながらないように
情報による心の感染を防ぐため
一人一人のリテラシー向上というものが
求められてきているかと思います。
島根県では 小中学校などでも
コロナ差別に関する授業が
行われています。
子供たちは グループに分かれて
感染した人たちに なぜ
差別や偏見が起こるのかを話し合い
ネットとの付き合い方など
リテラシーを学んでいます。
大野さん こうした取り組みについては
どのように思われますか?
インターネットに触れるような年齢からの
教育というのは非常に重要だと思います。
小さなお子様でも 自らが 炎上の対象に
なってしまうこともありますし
逆に加害者になってしまうことも
ありえます。
ネットと無縁で生きることは
難しい時代ですから
SNSとの向き合い方であったり
正確な情報を判断する力っていうものを
小中学校の現場で学ぶ必要性
っていうのは
高まってきてるというふうに考えます。
情報の信ぴょう性を確認するであったり
どのように行動したらいいのか
判断に迷ったりっていうような時に
一人で悩まず 信頼できる人に相談し
一緒に考えるということも
非常に重要になってきます。
ですから ふだんから 困った時に
誰に相談すればよいのかということを
調べておくということも
重要かもしれません。
最後に 今 ネットに関する悩みを
抱えてる方への相談窓口を
まとめて お伝えします。
心の不安を聞いてほしいという時は
厚生労働省のサイト「まもろうよ こころ」。
また 書き込みの削除など
対応の具体的な助言がほしい場合は
総務省や民間など
目的に応じた窓口があります。
そして 書き込んだ人への賠償や
処罰を求めたい場合は
「法テラス」
そして 最寄りの警察署や警察庁の
サイバー犯罪相談窓口
これらを利用してください。
今日は コロナの感染拡大をきっかけに
広がっている
ネット差別について考えました。
大野さん ありがとうございました。
ありがとうございました。
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